オートロ株式会社
(画像=オートロ株式会社)
福田 志郎(ふくだ しろう)――代表取締役
2014年、株式会社チュートリアル設立(現:オートロ株式会社)、代表取締役就任。2016年よりRPAインテグレーション事業、2018年にクラウド型RPAの Robotic Crowd (現:AUTORO)をリリース。それ以前は、欧州系のコンサルティング会社にて、新規事業の立ち上げ支援、資金調達支援などを行う。京都大学BA(理学、哲学)、京都大学 MBA。
オートロ株式会社は、Web Auto Robot の「AUTORO」で顧客の業務自動化を支援しているスタートアップです。 AUTORO はブラウザの自動化とAPI連携、機械学習を組み合わせることで、人がPC上で行っている仕事や人手では到底できない煩雑な作業などを自動で完了します。Google、Microsoft、IBMのスタートアップ支援にも採択されるなど、国内有数の技術力を持っております。

目次

  1. M&Aを選択した理由とその背景
  2. 売却先の選定におけるポイント
  3. M&A後の変化や挑戦、M&Aを通じて得られた学び
  4. 統合後の相乗効果
  5. これからのM&Aを目指す経営者へのアドバイス

M&Aを選択した理由とその背景

—— M&Aを選択された理由と、その背景についてお聞かせください。

オートロ株式会社 代表取締役・福田 志郎氏(以下、社名・氏名略) 当時、事業環境が大きく変化し、市場には細かなプレイヤーが多数存在する状態になっていました。そのため、セグメントの整理が必要だと感じており、その一環としてM&Aが自然と選択肢に上がってきました。

—— M&Aはかなり早い段階から検討されていたのでしょうか?

福田 最初に話をしたのは2019年ごろです。その後、2020年にも具体的なやり取りがありました。

—— いつ頃から事業の拡大を見据えていたのでしょうか?

福田 創業当初の2014年時点では、M&Aはまったく視野に入っていませんでした。当初は、個人事業に近い形で、コンサルティングやシステム開発を行う会社としてスタートしました。

転機になったのは2018年の外部資金調達です。正直、その時に新会社でスタートすれば良かったと思ったこともありますが、そのままの体制で進めたことで、結果的に会社の方向性が変わっていきました。

—— M&Aを決断する際に、特に悩んだ点はありましたか?

福田 悩んだのは「タイミング」ですね。企業価値をさらに伸ばす余地がある中で、いつ実行するのがベストかを慎重に考えました。ただ、AI技術の進化が非常に速く、単独で投資し続けるより、外部と連携した方が成長のスピードも可能性も広がると判断しました。

—— 実際に進める中で、特に難しかったことは何でしょうか?

福田 株主との交渉と、企業価値(バリュエーション)のすり合わせですね。「もう少し企業価値を高めてから売るべきでは」という意見もありました。そこに対しては、AI分野での投資加速や中長期的な成長のシナリオを丁寧に説明し、最終的には納得してもらいました。

また、M&A後の自分たちの役割についても、かなり時間をかけて擦り合わせを行いました。全体としては、スムーズな統合ができたと思っています。

売却先の選定におけるポイント

—— 売却先の選定にあたって、今回の経営統合の話はどのように始まったのでしょうか?

福田 最初は、新しいサービスを立ち上げるという構想からスタートしました。「何か一緒にできないか」といった協業の相談がきっかけです。当時は資金ニーズも特にありませんでしたし、あくまで連携の話として進んでいました。ちょうど2019年から2020年にかけては、別途資金調達も行っていた時期でした。

その中で、シナジーが見込める事業会社との提携が話題に上がり、結果的に非常にスムーズに話が進んでいきました。

—— M&Aの候補先としては、どれくらいの企業と接点があったのでしょうか?

福田 今回は少し特殊で、仲介は一切入れていません。ご縁のある一社との話だけで進みました。正式に株主へ説明をする段階で、念のため他社にも少し当たりましたが、実質的には最初から最後までこの一社と向き合って進めた形です。

—— 仲介を通さず、信頼関係の中で進められたのは理想的なケースですね。

M&A後の変化や挑戦、M&Aを通じて得られた学び

—— 現在の役割や立ち位置に変化はありますか?

福田 基本的には代表取締役を続けていますが、グループ内の技術エンジニアリングを幅広く見ています。営業に行くことは少なくなり、技術面に注力する割合が増えました。

今はグループ会社の主力事業会社で製品の総合販売代理を行っており、オートロでは開発とグループへの技術提供を担当しています。

—— 組織体制にも変化があったのでしょうか?

福田 営業部門はグループ内のAutomation事業部に集約され、社員は出向という形になりました。中には、会社の都合で転職させられたように感じた人もいたかもしれません。

—— 技術面や開発により集中できるようになったということでしょうか?

福田 技術面によりフォーカスできるようになりました。

—— 逆に、マイナスに感じる変化はありますか?

福田 退職者は何名か出てしまいました。それと、システム移行の際は一時的に会社のパフォーマンスが下がりましたね。ですが、徐々に立て直しつつあります。

統合後の相乗効果

—— M&Aの統合後の相乗効果についてお聞かせください。

福田 本格的な効果はこれからだと考えていますが、当社の技術をグループ全体に展開できるようになったのは大きな進展です。売上としてはまだ大きな変化はありませんが、今後の成長に期待しています。

—— 地方拠点での進捗はいかがですか?

福田 BizRobo!の販売パートナーや地方の営業拠点を活用し、全国での製品展開が可能になりました。これは大きな一歩です。とはいえ、最初の3ヶ月は会計システムの移行に時間を取られ、営業を本格化できたのは11月以降です。

—— これから受注が増える可能性も高いですね。

福田 その点は非常に楽しみにしています。

—— M&Aによる組織の変化についてはどう感じていますか?

福田 社内の雰囲気は大きく変わっていません。従業員の働き方も基本的にはそのままです。オープングループの技術者との交流もすでに進めています。戸惑いもなく、皆前向きに取り組んでいます。

これからのM&Aを目指す経営者へのアドバイス

—— M&Aを考えている方も多いと思います。経験者として、アドバイスをいただけますか?

福田 最初はハードルが高く感じるかもしれませんが、実際に進めてみると、意外とシンプルです。私は仲介を入れず、適時開示資料も自分で作成しました。一歩踏み出せば、想像よりスムーズに進むケースも多いので、検討しているなら挑戦してみる価値はあると思います。

—— 外部資金調達の経験が、スムーズさにも影響したのでは?

福田 デューデリジェンスへの対応には慣れていました。基本的に一人で進めましたが、情報管理の面でもその方がやりやすかったですね。

—— M&Aを振り返ってみて、決断は正しかったと思いますか?

福田 とても良い経験でしたし、また挑戦したいと思っています。

—— M&Aを進める上で特に重要なポイントは何だと思いますか?

福田 仲介者を入れないケースもありますが、もし仲介を活用する場合は、信頼できるかどうかを慎重に見極めることが重要です。専任契約を結ぶ前に、その点をしっかり確認することをおすすめします。

—— 信頼できるパートナー選びはM&Aの成否を左右する重要な要素ですね。

福田 信頼できる担当者と組むことで、スムーズに進めることができます。

—— 最後に、M&Aを考えている方々に向けて、一言お願いします。

福田 M&Aは大きな決断ですが、慎重に準備を進めれば、必ず成功の可能性は高まります。ぜひ、前向きに挑戦してみてください。

氏名
福田 志郎(ふくだ しろう)
社名
オートロ株式会社
役職
代表取締役

関連記事