ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)


総括

FX「こじれるトランプ経済政策でリスク回避の円高株安続く」

ドル円=140-145、ユーロ円=160-165、ユーロドル=1.11-1.16

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨2位(2位)、株価19位(19位)、トランプ大統領の不確実性で円高になるも株には資金流入せず弱い日本」
(円高・株安の不況志向)
 円高・株安が続く。去年までの円安傾向が変化している。何度も触れた貿易統計と外貨投信の円高への需給シフトによるもの。円相場は年初来、スイスフラン、ユーロとともに3強を形成、現在は2位。ただ株へも米国資金がシフトして強調推移する欧州と違って日経平均は弱くマイナス6.85%で世界最弱だ。利上げ政策と去年の円買い介入に見られるような政策が株高を阻んでいる。10年国債利回りは4.51%。

(コメ価格低下は日本を変える)
小泉進次朗氏が農水大臣に就任、早速コメ5キロ2千円をぶち上げた。日本の従来のサプライチェーンを崩せば可能だし、輸入拡大すればもっと可能性は高い。それより日銀が出来ない物価低下もコメが2千円となれば一気に進む。金利以外の物価低下策が脚光を浴びる。さらに大臣の地元で苦境に陥っている日産を救済を試みていたがそれも実現できれば、首相・日銀総裁の二刀流の役割を果たすことになり、日本の政治・経済・金融が変わるかもしれない。

(4月貿易統計は赤字だが、縮小)
 4月貿易統計は1158億円の赤字。3か月連続の貿易黒字とはならず。ただ前年同月比では77%の赤字が縮小し円安圧力が緩和している。原油価格下落による輸入の減少によるもの。
貿易赤字と同じく昨年までの円安を支えていた外貨投信残高も減少している。今年は1-4月で6.3兆円減少して円高に影響している。

(日本の報道の不思議)
 先週のG7財務相・中銀総裁会議では、プラザ合意のように円安是正に走るのではないかという事前報道が多かったが、米国からは為替は市場に任せる、G7声明でも同じ文言が確認された。だからといって円安に戻る気配はない。今年の円の需給は貿易赤字の縮小と外貨投信残高の減少で円買いとなっているからだ。トランプ大統領の「マッチポンプ」的発言で右往左往するが、基調の円高は揺るがない。
参考までに日本の円高報道のきっかけ(誤解?)となっていたトランプ政権の経済顧問ミラン氏の最新の発言は以下の通り。

「ドル安誘導のための秘密の為替協定を否定し、強いドルのメリットを称賛した。ミラン委員長は「米国は引き続き強いドル政策を追求している」と述べた。ドルを切り下げる国際協定の噂については、「われわれは秘密裏にそのようなことは何もしていない」と述べた。

(夏の円高も意識したい)
 例年、7月末あたりに円高となる傾向がある。お盆前の円買い需給、外債利払いなどが影響している。

*米ドル「通貨11位(11位)、株価(NYダウ)14位(14位)、こじれる経済。米国から資産を逃避」
(トリプル安覚悟のトランプ発言)
 トランプ大統領就任後はドルが下落し、米株価も弱い。関税問題をめぐる不確実性に市場が失望している。今月は曲がりなりにも米英、米中の関税交渉が始まり一時はリスク選好の流れもあったが、ムーディーズが米国をAAAの地位から引き下げた頃から様子がおかしくなり、EUやアップルへの関税発言で、再び株安ドル安の流れとなっている。
 米ドルは12通貨中11位と弱い。米株価3指数はいずれも年初来マイナス圏。5月の10年国債利回りは4.18%から4.5%へ上昇。

(欧州に資金シフトの動き)
 ゴールドマン・サックスやJPモルガンらは、顧客の欧州への資金移動を支援する傾向が高まっているとの認識を示した。資産運用担当者に対し、米国資産の耐性に関する問い合わせが増加しているという。エコノミストらが米国経済の先行きに対する見方を下方修正したことで、一部の投資家が金や欧州の株式・債券などの安全資産に逃避し、米国資産は4月に急落したと説明。欧州の投資家は年初来、予測不能な米国の政策を背景にポートフォリオを分散させており、米国から欧州に特化した上場投資信託(ETF)へと投資をシフトしている。

(EUと海外製スマホへの関税賦課警告-金融市場再び動揺
 トランプ米大統領はEUからの輸入品に6月1日から50%の関税を課す考えを示した。またスマートフォンへの25%の関税賦課案についても、全ての海外製デバイスに適用されると述べた。貿易戦争をさらに激化させ、市場の動揺を誘い、企業に混乱をもたらしている。
 トランプ大統領は、EUとの交渉が引き延ばされていると非難し、米企業が訴訟や規制によって不当に標的にされていると改めて主張。6月1日に発動予定の追加関税をEUが回避できる可能性については懐疑的な姿勢を示し、「合意は成立した。50%だ」と強調した。これとは別に、アップルが「iPhone」を米国内で製造しない場合、同社に対して少なくとも25%の関税を課すと表明。その後、アップルのみならず韓国のサムスン電子を含む全ての携帯電話メーカーに対し、米国内で製造されていない製品には25%の関税を賦課すると警告した。

(50%関税賦課のEUの反応)
  アイルランドのマーティン首相は、トランプ氏の今回の動きについて「極めて遺憾だ」と表明。「関税は全ての当事国・地域にとって損害をもたらす。交渉による解決こそが双方、さらには世界貿易全体にとって最良の結果だ」と強調した。スウェーデンのスバンテソン財務相は、「米欧両方の経済を傷つけ得る理不尽なエスカレート」だとトランプ氏の投稿について表現し、「われわれが必要としているのは自由貿易の拡大で、縮小ではない」と主張。フランスのサンマルタン貿易担当相は「欧州はこれまでと同じ姿勢を維持する。対立緩和を目指すが、対抗措置をとる用意はあるということだ」と述べた。

*ユーロ「通貨3位(2位)、株価2位(2位)DAX)、欧州に資金シフトの動き)」
(米の50%関税賦課の対ドルで上昇)
 時に引き離されそうになるが、円とスイスとともに年初来3強を維持。もちろん不安な米ドルの受け皿という他力的な上昇だが、最近は少し経済指標も改善してきた。そこでの米国の関税50%宣言であった。
株価(独DAX)は年初来18.69%高、独10年国債利回りは2.57%。

(消費者物価は低い)
 今週は5月独消費者物価の発表。予想は前年比で2%上昇、前月は2.1%上昇。来週はユーロ圏の消費者物価の発表、予想は2.1%上昇、前月は2.2%上昇。

(6月も利下げか)
ストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁は、6月の理事会で利下げを実施し、その後は停止するとの見通しを示した。先月、過去1年で7回目の利下げを実施した。米国の関税引き上げによって経済成長が大きな打撃を受けると警告し、数カ月以内に一段の利下げが行われるとの見方が強まった。
フィンランド中銀のレーン総裁は、データに基づいたアプローチを取っていると指摘。「従って今後得られるデータとマクロ経済分析によって、インフレの安定とやや抑制された成長という現在の見通しが裏付けられれば、6月の適切な対応は金融緩和を継続し、金利を引き下げることとなるだろう」と述べた。

(ヒステリックな関税50%でもユーロは対ドルで上昇)
 トランプ大統領は、欧州の製造業の生産拠点の米国移転を促すのが狙いで、米国がEUから米国に輸出する製品に50%の関税を課す計画だと明らかにした。トランプ大統領は、米国は現時点で欧州と新たな貿易協定を締結する意向はなく、企業が高関税を回避したいのであれば米国内に工場を設立するしかないと強調した。また、米国の財政収入が過去最高の12兆ドルに近づいていることにも触れ、今回の措置は製造業の復活を促し、雇用の拡大を促進することを目的としていると述べた。

(欧州に資金シフトの動き)
 米ドルの項でも書いたが、米国投資へ安心感がなくなり、投資家は欧州に資金シフトしている。欧州のファンダメンタルが良いわけでもないが、ドル資金の受け皿として欧州が選ばれ、欧州株が強い。
ゴールドマン・サックスやJPモルガンによれば欧州の投資家は年初来、予測不能な米国の政策を背景にポートフォリオを分散させており、米国から欧州に特化した上場投資信託(ETF)へと投資をシフトしているという。

*ポンド「通貨5位(5位)、株価8位(9位)、3指数が上昇でポンドも直近は強い」
(先週と5月はやや強い)
ポンドは年初来5位、先週は週間3位、月間でもここまで3位とやや上昇。強い消費者物価、小売売上、消費者信頼感と米中貿易交渉での合意が支援した。FT株価指数は年初来6.67%高。10年国債は4.68%

(消費者物価上昇)
 4月消費者物価は、前年比で3.5%上昇、3月の2.6%上昇から大幅に加速し、2024年1月以来の高水準となった。予想は3.3%上昇。
4月は、ガス・電気・水道料金が引き上げられ、社会保障料の事業者負担引き上げがあった。
発表を受け、8月利下げの確率は60%から40%に低下した。英中銀チーフエコノミストのピル委員は、賃金の物価への影響が依然強いとして、これまでの利下げペースは速過ぎとの認識を示した。

(大幅改善、4月小売売上)
4月小売売上は前月比1.2%増と、予想の0.2%を大幅に上回った。 好天や消費者信頼感の改善が背景。英国経済の見通しは厳しいが、個人消費が景気の押し上げ要因になる可能性がある。

(消費者信頼感指数は小幅改善)
5月の消費者信頼感指数はマイナス20と、前月のマイナス23から改善した。予想はマイナス22だった。
家計と経済全体に対する見通しがより楽観的になったことが要因で、金利低下と世界的な貿易摩擦緩和の影響を反映している可能性があるとみられている。

*豪ドル「通貨8位(8位)、株価12位(12位)、米中関税戦争で揺れる豪ドル、追加利下げ示唆」
(米中関税戦争で揺れる豪ドル)
豪ドルは年間8位。トランプ関税摩擦と米中関係悪化で対中貿易の依存度が高い豪経済に影響が出る。豪株価指数は年初来12位の0.08%高、10年国債利回りは4.39%.

(RBA利下げ。トランプ貿易摩擦が金融政策に影響)
 RBAは政策金利を4.1%から0.25%引き下げ、2年ぶりの低水準となる3.85%とした。
四半期ごとの金融政策見通しでは、コアインフレは予想よりやや速いペースで冷え込み、特にサービス業で顕著な鈍化を見込んだ。また、トランプ米政権の関税引き上げが世界経済の成長を低下させ、豪経済にディスインフレをもたらすと警告した。
  RBAのブロック総裁は、金利据え置きと利下げを検討したとし、0.5%利下げの是非についても議論したことを明らかにした。
総裁は2月の利下げ後にタカ派的な姿勢を示していたが、今回の会見では、状況は変化したと発言。トランプ米大統領が4月2日に相互関税を発表したことや、先行きが依然として非常に不透明なことに触れた。市場は総裁の発言をハト派的と受け止めた。スワップ市場は現在、7月の追加利下げの確率を60%と予想。8月の利下げは100%以上織り込まれている。

(今週は4月消費者物価など)
 今週は4月消費者物価の発表。予想は前年比で2.3%上昇、前月は2.4%上昇。4月小売売上の予想は前期比0.3%増、前月も0.3%増。

(豪4月就業者数、予想の4倍の強さ)
4月の就業者数は前月比8.9万人増加した。予想の2万人増の4倍超で、約1年ぶりの大幅な伸びとなった。女性のフルタイム就業が増えた。
失業率は予想通り4.1%で横ばい。労働参加率は上昇し、過去最高に近い67.1%となった。

*NZドル「通貨6位(6位)、株価16位(17位)、政策金利は0.25%利下げか。ただインフレ期待が上昇」
(NZドルは安定。材料はマチマチ)
 NZドルは年初来6位と安定している。ただリセッションを免れたばかりの経済は不安材料多く、株価も年初来3.92%安。10年国債は4.67%で先進国では最高水準の利回り。

(政策金利は0.25%利下げか)
 NZ中銀は今週政策金利を0.25%引き下げて3.25%にする予想が強い。ロイター調査ではエコノミスト30人中29人が、0.25%3の利下げ、1人だけは政策変更なしを見込んでいる。
1Q消費者物価は前年同期比で2.5%で、前期から0.3ポイント上昇したものの、インフレターゲットの1~3%内に3四半期連続で収まっている。また失業率は5.1%と4年半ぶりの高水準にあることも利下げを支援する材料だ。トランプ米大統領が打ち出した関税措置に関する不確実性の広がりも考慮する。

(ただインフレ期待は上昇)
  NZ中銀の四半期予想調査によると、企業経営者は2025年第2四半期時点で今後2年間のインフレ率が平均2.29%になると見ており、前四半期の2.06%(1年で最高の水準)から上昇していることが明らかになった。1年間のインフレ期待も2.15%から2.41%に上昇し、4四半期ぶりの高水準となった。長期予測では、5年先のインフレ期待は2.13%から2.18%に上昇し、10年先のインフレ期待は2.07%から2.15%に上昇した。

(4月貿易黒字が14億ドル、月次黒字が10億ドルの水準を超えたのは5回目)
  4月の貿易黒字が14億ドルに達した。これは昨年の同月の1,200万ドルの赤字から劇的な好転であり、月次黒字が10億ドルの水準を超えたのは5回目である。
一次産品輸出の急増による。乳製品と果物産業の価格高騰も一因だ。木材製品の輸出も前年比42%増加した。米国向け木材輸出は現在、10%の追加関税の適用除外となっているが、これは一時的な措置であり、現在検討中だ。中国への輸出は昨年増加したが、関税戦争によって状況が変化する可能性がある。